第45章 青い夏に【花巻 貴大】
case1 〜津田 葵の場合〜
私は、花巻 貴大に想いを寄せているんだと思う。
いつからかはわからない。
気づけば、彼を見るたび心臓はうるさいし、顔は紅潮してくるのが自分でもわかってしまうほどになっていたのです。
ここで、私の悩みを聞いて欲しいのです。
どうすれば、彼を落とせるんでしょうか?
落とすって、聞きは悪いかもしれないですけども!
振り向かせるなんて言ったら、いかにも頑張らなきゃって感じで嫌なんですよね。
学校一の美形らしい及川を見たってちっともキャー!、なんてことはならない。
むしろマッキー見かけたほうが、キャー!、てなるわ。
今だって、目の前で項垂れながらどこから持ってきたのかわからないうちわをパタパタと力なく仰いでいる。
首筋に伝う汗が、いやもう何もかもが色っぽい。
私の脳内絶賛黄色い声がコーラスしてるんだぞ。
なんでそんなにかっこよく見えるんだ。
何なんだ、この人。
彼とは、メッセのやりとりを毎日している。
そして、思ったこと。
彼は難攻不落だ。
他人が誰を好きなのかとかは、わかるくせして自分に向けられる気持ちは気づいてない。
ほんと、何なんだ。
天然なのもいい加減にしてよね。
そう、だから振り向かせるじゃなくて、落としたい。
バレーだって、アタックで派手に決めるのもいいけど、ツーアタックで静かに畳み掛ける時が何より相手の度肝抜かすみたいで楽しくないですか?
ちょっと問題発言。
まあ、つまりですね。
振り向かせるって機会を狙うより、私は普段の振る舞いとかで徐々に好きになってもらいたいのですよ。
嗚呼誰か。
この気持ちをわかってちょうだいな。
そして、救済の手を差し伸べてくれませんかね〜。