第45章 青い夏に【花巻 貴大】
「まぁっきぃ〜〜
暑い、暑い、あっついよ〜」
そう言い、制服の胸元を引っ張りながら下敷きで自らを涼ませる津田 葵、高校3年生。
「そんなこと言われてもどうにもできねぇよ〜」
同じく、あまりの猛暑に項垂れ、机に突っ伏している花巻 貴大、高校3年生。
彼らは同じ青葉城西高校に通うお同じクラスメートにして、世間で言う所謂『リア充』と呼ばれる関係に……………ない。
そう、ないのだ。
想いは寄せているが、その関係を築けないままでいる。
夏休みはとうに始まっている。
では、なぜ2人は学校に居るのか。
答えは簡単である。
夏休み補習だ。
最近の定期テストで、彼らは見事に仲良く赤点をとってしまったのだ。
花巻のほうは、それなりにショックを受けたみたいだ。
なぜなら?
『え、マッキー赤点なの?!
この及川さんが教えてあげよっか?』
いつもは負けることのない科目を、彼が所属するバレー部の"一応"主将さんに負けた挙句、赤点をとり監督、コーチからは怒られる。
さすがの花巻も、暑さとイライラに頭は参った。
一方、津田 葵、彼女はというと。
彼女もまた、女子バレー部に所属しており、これまた"主将"という大黒柱を担っている。
そして彼女もまた、傷ついていた。
『えー!葵ちゃん!赤点取っちゃったのー!?この及川さんが、葵ちゃんに勉強を教えるべく、一肌も二肌も――』
『あ、結構なんで。間に合ってます。
間に合ってなくても間に合ってます。』
『えっ、それどういう――』
彼女もまた、男子バレーボール部主将には色々と頭にきていた。
今や学校一の"イケメン爽やか男子"と謳われる及川を、彼女は、もとい彼女含めた女子バレー部の皆様は、彼のプレー以外はそんじょそこらの女子見たく、キャーキャー黄色い声を立てることもない。
ともかく2人は、暑さと、及川と、補習に参っているのだ。
「えっ、ちょっとそれヒドくない!?」