第44章 *たとえあなたが忘れても* 【澤村 大地】
彼女の躰を、思いっきり抱きしめた。
「ありがとな、津田」
「ううん……
お礼をいうのはわたしのほうだよ
今まで、わたしのことずっと好きでいてくれて
ありがとう……
お母さんがね、わたしをお見舞いに来てくれる度に話してたの。
澤村くんのこと。
『澤村くん、あなたが目を覚ます前にずっと来てくれていたのよ。
彼は、自分のことをとても責めていたわ。
葵を想って、ずっと――』
どんな人なんだろうって、思ったんだ。
目が覚めてから2日後に、お母さんが澤村くんに連絡するって言ってくれた。
でも、その時もやっぱりわたしの記憶は薄れていて――
澤村くんを傷つけた………」
「俺は、気にしてないよ。」
「え?」
「俺は、お前が俺を忘れようが、傷つけようが……
俺はお前を責めないし、忘れない」
彼女の眼から涙がまたあふれる。
そして、ぎゅっと俺を抱きしめてくれて――
葵は耳元でこう言った――
『大好きだよ、大地くん』
ーendー