第44章 *たとえあなたが忘れても* 【澤村 大地】
「なんで…………
なんで澤村くんは………、こんなにもしてくれるの?
わたしは2日経てば、澤村くんのこと忘れちゃうかもしれないのに………」
「それは………」
事故にあってから、数カ月。
俺はあれから、色々と考えた。
俺が、代わってやれたらいいのに―
そう思うのと反面、どこかで俺じゃなくて良かった、と思っている自分がいると思うと怖かった。
だけど、助けたくて。
救いたくて。
「それは、俺は
葵が好きだからだ」
驚き見上げる彼女の顔。
まっすぐ俺は、彼女の見開かれた大きな瞳へ視線を投げる。
「わたし………
わたしね、目が覚めた時
自分が何なのか、何もわからなかった。
事故にあって、記憶が失くなったって聞いた時、そのこともわたしは、覚えてなくて……
正直、こうなっちゃうならいっそのこと
死んでしまえばよかったって、思った。
お母さんに、「葵のお母さんだよ」って言われた時もし実感沸かなくてずっとモヤモヤしてた。
心に黒いモヤがずっとあって、これが何なのか分からなくて。
でも、澤村くんに出会って
毎日毎日お喋りして、そのモヤが何なのか、分かったの――」
津田は、一呼吸おいて
俺をまっすぐに見た。
もう、昔と変わらないほどの瞳。
光が宿っていて、それでいて強い。
彼女がこうして、俺を見るのは
事故があってから初めてかもしれない。
俺は、ごくり、と生唾を呑んで
次の言葉を待った。
「わたし、澤村くんが………………好きです。」