第44章 *たとえあなたが忘れても* 【澤村 大地】
それからも毎日病院へ通い続けた。
病室の扉を開くたび、彼女の瞳に光がさしてくる。
そんな、気がした。
でも、本当に彼女の瞳は俺を見つけるとパッと輝く。それを見るたび俺も、ニッと笑顔で会えるんだ。
記憶を失くしても、彼女は変わらず他人を笑顔にさせる。彼女もまた、笑顔が増えた。
「澤村くんがくれたノート
わたし、これのおかげでちゃんと憶えてられるんだよ。
ほんとうに、ありがとう」
ニッコリ微笑んでいきなりそんなこと言うから、俺は多分今、凄く顔が紅いと思う。
「そうだ、津田
今日はお前にプレゼントがあるんだ」
「プレゼント?
プレゼントなら、もうこのノートで充分だよ」
「まあそう言わないでくれよ
目閉じてくれないか?」
「う、うん………」
「はい、目開けていいぞ」
「ん、……?これ……」
彼女の胸元で揺れる銀のネームプレート。
そこには、彼女の名前と誕生日が彫られている。
「わたしの、名前………」
目をパチパチとさせながら、俺がプレゼントしたネックレスを見ている。
「もしも、お前の記憶が失くなっても
お前が、お前を忘れないように」
「…………あり、がとう……
っ、ありがとう………!
澤村くん、ありがとう………!!」
零れる滴が、夕陽に照らされて
キラキラと光り輝く。
俺は、その泪を拭った。