第44章 *たとえあなたが忘れても* 【澤村 大地】
学校までの道中だった。
俺と彼女は、肩を並べて信号を待っていた。
そこへ………
ガシャン
乗用車は、突っ込んだ。
俺も、彼女もまき込まれた。
しかし、どうしてこうなった?
原因は運転手の居眠り運転だ。
それは、置いておいて。
どうして俺が
軽傷で、
彼女は重体となってしまった?
俺達は病院に搬送された。
俺は、事故の事が分からなかった。
その瞬間の記憶が、フラッシュのように眩しくて眩しくて……
見えない。
まるで、思い出すのを拒むような。
病院のベッドの上で、包帯が巻かれた頭を抑えてその日1日必死で思い出そうとした。
でも、できない。
その瞬間の出来事が、どうしても思い出せない。
医師が病室に入ってきて、俺の具合を聞く。
「あの、津田は………、津田は無事ですか!?」
俺のことより、津田が心配だった。
この病室には居ないし、何よりも彼女のほうが自分より大事だからだ。
医者は堅く、口を結ぶ。
そして、言いづらそうに口を開いてこう告げた。
「彼女は、ひどく頭をぶつけて
今意識不明の重体……だ。」
目に見える景色が、灰色へ褪せる。
俺は、声が出ず、ただ、ただ、白い掛け布団を見つめることしかできない。
夕方になると、バレー部の奴等が見舞いに来てくれた。
皆俺の様態を気にかけてくれたけど、俺は「大丈夫だ」と何の含みもない、重みもない、空気のような声を出すばかりだった。
その次の日
俺は退院した。
だけど、1日経っても彼女は目を覚まさなかった。