第41章 *桜並木でまた会いましょう*【赤葦 京治】
東京に戻って、あの時と変わらない桜並木の下で立ち尽くしていた
風でひらりひらりと舞う花びらを見上げながら東京は少し暖かいななんて思いながら
ぶわり、と風が巻き起こりかぶっていたベレー帽が飛んでいく
それを追っかけ拾い上げると、目の前の男性と目があった
お互い目を見開く
風がとまる
音が消える
「葵さん………ですよね?」
私はコクリと静かに頷いた
「京治くん………だよね?」
彼もコクリと頷いた
ああ、会えた
こんなこと、あるのだろうか
連絡もなしに会えるなんて、まるで少女マンガみたいだ
「帰ってきていたんですか?」と京治くんが問う
私は、「京治くんに聞きたいことがあってちょっと戻って来ちゃった」と言った
俺に?と小首を傾げてから、ここじゃ寒いからと近くのファーストフード店へ入った
持ってきた封筒を見せ、「卒業式の日、京治くん何て言ったの?」と聞いた
「知りたいですか?」と彼が少し笑う
うん、と言うと彼は口元に手を当て内緒話でもするかのようなポーズをとった
私も耳を近づける
「あなたが 好きです」
目を見開き直後顔が赤らめていくのが鏡を見なくても分かる
「って、言ったんですよ」
機嫌良さ気に口角を少し上げながら、彼はコーヒーを啜った