第41章 *桜並木でまた会いましょう*【赤葦 京治】
今では懐かしいあの頃の写真は当時の色を鮮明に遺して手元に収まっていた
外国へ留学しそこの大学へ通っていた
この写真を撮ったのが皆との最期
そして、桜並木でただ一人この留学のことを話し別れたのが彼との最期
パラリパラリとアルバムをめくっていると、中から茶封筒がスルリと落ちてきた
見覚えのないものだった
表面には何も表記されておらず、ひっくり返せば右下隅に小さく何か書かれていた
しかし、擦れでもしたのか読み取り辛く観念してペリペリとその封筒を開けた
中からは三つ折りにした白いびんせんが1枚出てきた
ゆっくりと開いていく
緊張と淡い期待を乗せて
そして私は目を見張った
拝啓 未来のわたし
挨拶はとりあえず抜きにします
この手紙が何年後、いつどこで読まれるかそれは現在、いな過去のわたしには分かりませんから
未来では、尚もわたしは外国にいるのでしょうか
あの日の未練は、断ち切れましたでしょうか
過去のあなたが、なぜアルバムに挟んだのかその理由を思い出せますか?
この写真を撮った後にあったこと、あなたは思い出せますか?
あの時彼が何を言ったのか分からないままなら、それがあなたの未練です
手紙はそこで切れていた
拝啓から始まって、敬具と終わらなかったこの手紙
書き忘れたのか、それともこの時敬具なんて知らなかったか
いや、そんなことはどうだっていい
私は、戻らなくちゃいけないみたいだ