第41章 *桜並木でまた会いましょう*【赤葦 京治】
「なんでこんなこと聞き漏らしちゃったんだろう………」
未だ冷めない顔をパタパタと扇ぎながら私もアイスコーヒーを口に入れた
「聞き漏らしたも何も、俺あの時何も言ってませんし」
「へ!?」
驚いて顔をあげるといつもの表情の京治くん
えっ、でも封筒に……と言いかけるとああ、と彼は言った
その手紙、俺が書いたんですよ
中々葵ぽかったでしょう?
その言葉を聞いた瞬間、ほんとに目が丸くなった気がした
まさかこの京治くんがこんなことするなんて
「で、返事はないんですか?」
真っ直ぐ私を見る彼の眼には私が映っている
きっと私の眼には彼の小悪魔的表情が映っているんだろうな
息を吐きだした
「京治くんの家に泊まってもいいかな?」
「それ、そう言うふうに捉えられてもおかしくない意味ですけど?」
「えっと、単純に
とりあえず、だよ
とんぼ返りはさすがに出来ないから」
「じゃあ、先に返事聞かせて下さいよ」
「えー………
どうしても、ここで?」
「あなたの返事次第ですよ?今晩」
さらに顔を赤くしてしまった私をみた彼はまた意地悪く笑う
「そんなの、京治くんの手紙に引っかかったんだから、察してよ」
「行きましょうか」
手を取り、私達は外に出る
明日は大学の卒業式なのに、実は1日待てばこっちに帰れたのに、私は今も昔も変わらずバカなのかと彼の隣で笑みを零しながら考える
でも、こういうのもいいかもしれない
明日は彼を連れて一旦大学に戻ろう
そしたらまたこっちに来て、新たな生活を送るんだ
―end―