第40章 *白……*
「今日ね、フラレちゃったんだ……
この日になって、フラレちゃった……」
はは、と笑いながら葵は話す
「へぇ」
と興味なさげに返事をする僕
葵は続けて紡ぐ
「今日、クリスマスなのにね
わざわざこの日にフルなんてさ、勝手だよね……
でも、怒りと同時に涙が溢れちゃって」
ああ、だからあの時湿った声だったのか
「悲しかったから当然じゃないんですか?」
葵はフルフルと首を振って、目を靴先に落としたまま告げた
「変だよね、ちっとも哀しいって思わなかった
わかったって言って、踵返して歩いている時に思ったんだ………
『ああ、葵は白に戻れないな』って」
「白?」
「白はさ、何色にも染まってないのを白って言うでしょ?
でもさ、透明じゃないの
白色って、わかるから……
誰かと出会ったり、付き合ったりしたら自然とその人の色と混ざる
よくあるじゃない?
『あなた色に染まります』って」
「何そのクサいセリフ」
「ふふっ
葵は白色
誰の色にも染まらないし、染まってない
だけど、元カレと出会って色づいたんだ……
白色は、染まっちゃったら最後戻らないでしょ?
だから………」
そう言って、押し黙った
シンシンと雪が降り始める
「じゃあ………
僕が白に戻してあげる」