第40章 *白……*
「―と、言うとでも思った?」
「もうっ!!
……でも、戻りたいな
君は何色なんだろね」
ニコリと微笑みかけてくる
chu―
気がつけば、体が勝手に動いていた
そして、口から言葉が次から次へと出る
「僕も、今日は白になったんです」
赤らめた頬と、少し見開いた目で
葵は聞いた
「フラレたとかじゃなくて、今日の僕は、僕じゃないんです
あなたを染めるとしたら僕は迷わず黒にしますね
誰にも染らない黒
でも、今なら僕は白ですし少しはあなたも白に近づけられるんじゃないですか?」
「………うん そうだね」
そう言って、自ずとどちらからともなくキスをした
まるで、さっき出会ったばかりなのが嘘のように
「葵は
君と染まりたいな」
驚いて、そして内心喜んで
「染めてあげますよ
葵」
耳元で放つ言葉
「ほんとはね、これ落とし物じゃなくて捨てた物なんだ
ぶつかったついで落としたら、自然だしその人がわざわざ届けに来ないだろうって思ってた」
クスリ、と笑って僕の顔を見る葵
「でも、届けてくれた
君は、今日の君はおかしいのじゃなくて
今日の君は普段より素直になれたんじゃない?」
「………さあ、僕にはわかりませんよ」
「やっぱり君は白だね」
「蛍」
「?」
「僕の名前」
「これ、ありがとう
またね、蛍」
「あっ……」
上げると言って巻いたのに返された
また、と言って走り去った彼女
触れては溶けてしまう雪のように………
それなのに、雪は白い
―end―