第33章 隣人さん【二口 堅治】
――幼し頃――
新しく住む家へ、荷物が次々と運ばれていく
お母さん
「しばらく家に入れないから、そこら辺ウロウロしてて!
あ、でもあんまり遠く行っちゃダメだからね
怖いおじちゃんに連れてかれるからね」
葵
「うん……
わかった……」
怖いおじちゃんに連れて行かれるのもイヤだけど
なにより、初めての土地で向上心の赴くままにどこかへ行く勇気もなかった
仕方がなく、邪魔にならないようなところで、1人ボーッと荷物が運ばれていく風景を見ていた
??
「ねえ、君ひとり?」
葵
「えっ!?う、うん……」
いきなり話しかけられて驚く
振り返れば、私と同じ年ぐらいの男の子が居た
??
「じゃあ俺と遊ぼ!!」
そう言って、私の有無も聞かずに手をとって走りだした
着いた先は、公園だった
ブランコとすべり台だけの小さな公園
それでも、私達にとっては十分な遊び場だった
??
「キミ、なんて名前?」
葵
「私、津田 葵
今日は、引っ越してきたばかりなの」
??
「もしかして、俺の隣の人?
俺、二口 堅治!よろしくっ」
そう言って、ニッコリ笑った彼の顔は
今でも忘れない