第30章 手を伸ばせ【影山 飛雄】
放課後
体育館へ行くと、菅原さんと葵が楽しそうに話をしていた
あんな、楽しそうに喋るんだな………
心に黒い何かがモヤモヤ広がる
葵
「飛雄?
調子悪いけど、何かあった?」
「何もねぇよ」
しまった、と思った
こいつは何も悪くないのにやつあたりしてしまった
葵
「飛雄、隠し事はなしだよ
何かあったんでしょ」
ズイっと顔を覗きこむ葵
「何もねぇって!」
やつあたってはいけないと頭で理解しながら言葉が出てきてしまう
葵
「………わかったよ」
低く凛とした声が、一層重く響いた
怒らせてしまった
なんで、上手くいかねぇんだ……
"幼なじみ"という近しい距離なのに
何故か遠く感じる
俺が手を伸ばしても
届きそうにないくらい
遠い遠い存在