第8章 悔しい涙
その声はあまりにも大き過ぎる。
周りにいた人達はなんだ?というように吉村を見る。
田中はその声に驚き、肩をビクつかせてから後ろを振り向いた。
目に飛び込んで来たのはものすごいスピードで走って来る吉村だ。
「え............」
思考が止まり、一時停止する。
他の部員も「え....」という顔をする。
吉村は田中に飛びつき、田中はその勢いで後ろに倒れた。
「いでっ!」
お尻を強く打ち、ジンジンと痛む。
吉村はそんなことお構いなしにぎゅっと力強く田中を抱きしめる。
その様子を黙ってみている部員。
何がどうなっているか分からない田中。
暫くすると吉村は田中から体を離し、目を輝かせている。
そして大声で一言。
「おめでとう!!」
「え?」
「見てたよ、試合。私試合見るの初めてでさ、すっごい感動した!」
「あぁ、ありがとう」
「うん!」
「あのさ、吉村」
「ん?」
「退いてくんないかな」
吉村は田中が何を言っているのか分かったようで、顔を赤く染め、素早く退いた。