第8章 悔しい涙
「わりぃわりぃ」
田中は微苦笑を浮かべ、謝る。
「たく、もぅ....」
彼女は溜め息混じりの息を吐く。
すると、体を机の方に向き直し、シャーペンを握る。
「この問題が終わるまで待って?」
「おぅ、いいぜ」
彼女ーーー吉村美颯はノートにシャーペンを滑らせた。
田中がそこを覗くと、訳のわからない記号や数字が列べられていた。
「なぁ、美颯。なんでこんなん解けるんだよ」
ノートには、三角比についての問題が書かれていた。
綺麗に直角三角形が2つ書かれている。
「なんでって....簡単だからだよ」
田中は吉村の左の席に着く。
覗き込むようにしてノートを見ている。
「俺、これダメなやつだ。テスト出来なかったし」
「私が教えてあげようか?」
吉村は問題を解きながら言う。
どうせ、期末テストの範囲でしょ、と付け加える。
「いいのか?」
「いいよ。教えれるってことは、理解してるってことだから。私の確認にもなるし」
「じゃ、頼むわ」
「うん」