第8章 悔しい涙
「田中、帰るのはいいけど、ちゃんと無事に送り届けるんだぞ?もう暗いんだし」
「分かっていますよ、大地さん」
そう言うと、田中はそそくさと部室を出た。
部室を出て行ったのを確認して、皆は頷いた。
気になるので、尾行するのだ。
月島は「興味ないので帰っていいですかぁ」と聞くが、強制的に尾行するハメになった。
*****
尾行されていることに全く気付いていない田中は鼻歌を歌いながら、スキップで校舎の中に入って行く。
階段を上がり、図書室へと向かう。
尾行している人たちは不思議に思う。
(((なんで図書室?)))
図書室の廊下側の窓から中の様子を伺う。
図書室には田中と勉強している女子生徒しかいない。
おそらく、その女子生徒が田中の彼女だろう。
田中は自分の彼女に近づく。
机の向いに立っても気付かれない田中は、彼女の背に回って、彼女の目の前にあるノートを覗き込んだ。
「なんじゃこりゃ!?」
彼女の肩がびくっと動いた。
後ろを振り向き、後ろにいるのが田中だと分かれば、息を吐く。
「どうして声掛けてくれんのよ」
その声は顔ととても似つかわしくない声だった。
顔に似合わず、低いのだ。
顔立ちは綺麗で、色白。
黒い綺麗な髪は後ろで一つに結んである。