第6章 本を読む人
俺たちは雪降る中を傘もささずに手を繋いで歩いている。
「ここだよ」
俺は立ち止まり、目の前の建物を見た。
そこは小さな寺院だ。
吉村はわからないという風にはてなマークを頭に浮かべる。
俺は微笑み、手を引いて中に進んでいく。
寺院の裏には小さな墓地があった。
「墓地?」
俺は頷いた。
「ここはな、共同墓地なんだ。引き取り手がいない人や孤児たちが葬られている墓地なんだ」
俺は吉村の手を一層強く握る。
俺はどんどん奥に進んでいく。
1番奥の真ん中の墓の前で歩みを止めた。
墓石に雪が積もっていてなんて書いてあるかわからない。
俺はその雪を払い除ける。
「え........」
吉村がその文字をみて声を漏らす。
墓石には吉村美颯と彫られていた。
「どう、して?」
「ずっと調べていたんだ。そしたら吉村が孤児であることがわかって。だったらお墓は共同墓地にあるんじゃないかと思って探してた」
俺は吉村と向き合い、
「吉村さ。俺といれたらそれでいいって言ってただろ?俺もそれでもいいと思ったことはあったの」
「じゃぁどうして?」
「でも、やっぱりダメだと思った。俺は吉村が好きだし、ずっと側にいてほしいって思った。だけどダメなんだよ。死者はちゃんと成仏しなきゃダメなんだって」
「東峰くん........」