第6章 本を読む人
それから俺は吉村美颯という人物のことを調べた。
にわかに信じ難い情報も入った。
吉村美颯という人は30年程前に殺された。
という情報だ。
なら、階段にいる吉村は幽霊と言うことか?
これは本人に聞いた方がいいと思い、聞いてみた。
「あ。やっぱり私死んでるんだ」
そう軽い調子で言われた。
やっぱりってなんだ?
「え。吉村って呪縛霊なのか?」
「んー。そうだと思う」
なんちゅー曖昧な!
霊ってことは、未練があるからいるんだよな!
「なぁ、吉村。してほしいことはなんだ?」
「連れ出して欲しい」
真顔で言われた。
でも、と吉村は続ける。
「でも、東峰くんとこうして話してるのもいいかも」
「え........?」
「この鎖を外して自由になりたいけど、東峰くんがいてくれたらそれでいいのかもって思うようになったの」
彼女は楽しそうに微笑みかける。
その時、心臓がぎゅっと掴まれた気がした。