第6章 本を読む人
その子は女の子で、どこか人間離れした顔立ち。
とても整った綺麗な顔。
大人とも子供ともつかないその顔を俺は見つめていた。
よほど集中しているのか、俺の視線に気付かない。
俺は、しおりを差し出し、声をかけた。
「あの、しおり....」
女の子はしおりを見て、次に俺の顔を見る。
俺はニコッと笑う。
「ぎゃーーーーーーーーーーーーー!!!」
突然鼓膜が破れるくらいの音量で叫んだ。
顔と声のギャップがとてもある。
なぜそんなに綺麗な顔しているのにそんな声で叫ぶのだろうか。
「な、ななななななな....」
女の子は変な動きをする。
俺から逃げるように後ろに仰け反る。
「え、えっと....な、なんのご用ですか?」
「しおり。落ちてきたから」
「あ、ありがとうございます」
女の子は俺の指で挟まれていたしおりをそっと抜き取った。
受け取ると、また本を読み出した。
俺は体育館に戻って行った。
*****
帰る時。
俺はまたあの非常階段の横を通った。
すると、きらんと何かが光った。
絹のような糸。
「ごめん、大地。先帰ってて」
「あ、あぁ」
俺は非常階段を上る。
踊り場を2つ超えた先に女の子がいた。
先ほどの女の子。
女の子は本を呼んでいなかった。
ただ静かに目を閉じて眠っている。
俺は女の子の体を揺すってみる。
「うぅ〜」と唸り声がその子から聞こえてきた。
「こんなところで寝ていたら風邪引くよ?」
そう話しかけると
「待ってる人がいるんです」
と寝起き声で言った。
「待ってる人?」
「はい」
女の子はまた寝てしまった。