第6章 本を読む人
いつものように部活をする。
そう、いつものように。
いつもと違うことをするつもりなんてなかったんだ。
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夏も過ぎ、残暑が厳しい9月。
いつもはボールが出ないように、体育館の扉は閉めてある。
だけど今日は特別暑かったから閉めていなかった。
俺がスパイクしたボールが見事に外に出てしまった。
「すまん!取ってくる」
俺はシューズを脱ぎ、靴に履き替えてボールを追う。
ボールはちょうど、非常階段のとこで止まっていた。
ボールを拾うと、1枚の長方形の紙が降ってきた。
なんだ、これ?
しおりか?
その長方形の紙にはピーターラビットが描かれている。
俺はそれを取り、上を見上げる。
すると、階段の隙間から赤い、絹のようなキラキラした糸が何本も見えた。
風に吹かれたそれは髪だ。
赤?
赤髪の子、学校にいたっけ?
俺はその子がこのしおりを落としたかもと思い、階段を上る。
踊り場を2つ超えた先にその子がいた。
膝の上に難しそうな分厚い本を乗せ、静かに読んでいる。