第6章 修行開始と旅。
「スイレン、起きてよ。今日はイタチ兄さんがくる日なんだから」
あれからスイレンはどういうことか、私と一緒に住むようになった。
初め、それを聞いたときは「え、」と予想外の展開に目を瞬かせたが、私が黙っているとスイレンが駄々をこね初め、ネネのお願いもあり、了承した。
ネネは、寝床に帰るらしい。
「ねえ、スイレン。・・・今日の朝御飯抜きにするよ?」
『おはよ』
「あ、起きた。スイレン、ご飯出来てるから食べよう?」
そう言うと、スイレンは人間の姿になった。
スイレンは何でもなれるらしい。
それを聞いたときはびっくりしたけど、そういえばカミサマだったと思いだし一人納得した。
スイレンの今の姿は髪が長く、白い、いわゆる美人さんだ。
「・・・今日は、イタチ兄さんが来るから、ちゃんとネコになっててね」
「うん、分かった」
「よし、いい子だね」
「えへへ」
一緒に住むようになって数日。
スイレンは子供っぽい。
そして私に甘いらしい。
と、ネネが言っていた。
お昼が近づくと、戸がコンコンと2回ノックされた。
「・・・イタチ兄さん!」
「ハル」
戸を開けると、予想通りイタチがそこに立っており抱きついた私を受け止めた。
「・・・なんか、久しぶりな感じ」
「そうだな。・・・ハル、身体の方は大丈夫なのか?」
「うん、平気だよ」
「・・・そうか」
イタチが眉を下げて私を見るので、何か違う話題を、とどうしたらいいかと必死に考える。
(えっと・・・あ、)
「あ、ね、ねえ、イタチ兄さん。見て、この子。かわいいでしょ?」
ベッドで寝ていたスイレンを持ち上げ、イタチへと渡す。
スイレンは寝たままだ。
「・・・どうしたんだ、これ?」
「あのね、スイレンって言うの」
「へえ・・・飼うのか?」
「・・・駄目、かな」
「いや、お前が決めたのならそれでいい。ハル、しっかり面倒見るんだぞ」
「うん」
イタチ公認というわけで、何とかスイレンの存在は怪しまれずに済む。