第50章 番外編2
ついに五秒を切っても、なかなか決めきれない私はよく考えることもできないまま、答えてしまった。
「さーん、にー、いーち、ぜー・・・」
「やる!」
「うん?」
「やる。スイレンのところで働く」
「ホント?やったあ、じゃあ決まりね!」
「・・・でも、住み込みじゃなきゃダメなの?」
「うん。それが条件だからね」
スイレンとのやりとりのあと、また後日イタチと会った。
「・・・ごめんなさい。私、イタチ兄さんのお荷物にはなりたくないから、家族にはならない。イタチ兄さんはそんなこと思わないかもしれないけど、私が嫌なの。だからこれは私のため」
「・・・そうか」
「でも・・・その、時々会いたいの。ワガママなのは分かってるし、断っといて何様って感じだけど、その・・・」
「ああ。オレも会いたい」
「・・・うん、ありがとう」
イタチは最後まで優しかった。
きっと、私がどう言おうが頷いてくれるのだろう。
(・・・私、バカだなあ)
(血が繋がってなくたって、あの人は私の兄だ)
そんなことも言い切れないなんて、私は最低だ。
でもこれで良かったんだ。
兄妹だからという理由で、ずっと一緒にいるというのも違うと思う。
私たちは近くにいたからこそ、お互いに汚い部分を隠し合って、守り合って生きていた。
だから、今回は距離を置く。
傍にいるということは、必ずしもずっと寄り添うことじゃないと思う。
今度こそ彼が壊れないように、私は心の支えになりたい。
そんなこんなで、成り行き上施設を出ることになった私だったが、どう伝えたらいいか悩んでいた。