第47章 新たな一歩
戦争が終わった。
あのあと、サスケはナルトと戦い、そして敗けた。
以後お互い利き手を失ったが、後悔はしていない。
サスケは治療の為、木ノ葉病院に入院することとなった。
と言っても何をするわけでもなく、ぼんやりと外を眺める日々が続いていた。
「・・・」
ハルは死んだ。
サスケの手を握ったまま、最期に小さく笑って目を閉じた。
彼女が動かなくなったとき、サスケは何度も彼女の名前を呼んだ。
やがてそれは慟哭に変わり、サスケの目から涙がこぼれた。
ハルとスイレンの亡き骸はサスケを含む関係者の前で火葬され、灰になった。
綱手の善意で、墓は両親の墓の隣に建ててもらった。
“サスケ兄さん、幸せになってね”
彼女の最期の言葉が、サスケの頭の中にこびりついて離れない。
目を閉じる直前の彼女の表情が忘れられない。
・・・生きる意味を失った。
(オレはこれから、どう生きていけばいいんだ・・・?)
もう、自分の最愛の妹はどこにもいない。
そんなことは分かっているけれど、どうすることもできなかった。
そんなある日、病室の扉がノックされ、入ってきたのはカカシに連れられた若い女だった。
「・・・サスケ、お前にお客さんだ」
カカシの声に顔を上げる。
知らない女だった。
訝しげな表情のサスケと彼女を残し、カカシは特に説明もせず出ていく。
扉が閉まると、彼女は近くにあった椅子をベッドまで寄せ、サスケの姿を見ると小さく笑った。
「・・・そんな顔せんでも、別に怪しい者と違うよ?」
「・・・誰だ?」
「ウチはネネ。アンタはうちはサスケやろ?・・・ウチは昔からアンタのこと知っとるけど、こうして話すのは初めてやもんなあ。そんなリアクションも仕方ないか」
ネネと名乗った彼女は、「主様とハルはやっぱり帰って来んかったよなあ」と苦笑いで言った。
「・・・主様がなあ、“帰ってこなかったらうちはサスケに”って言って。預かっとるものがあるんよ」
「主様?」
「スイレンさん。・・・この名前、ハルが主様にあげたんよ。主様、すごい喜んどったんよ。ハハ、懐かしいなあ」
ネネが小さく笑う。
その笑みに少しの寂しさが見えて、コイツも大切なものを失ったのかと気付かされる。