第46章 幸せ者
ゆっくりと意識が浮上していく。
重たいまぶたを持ち上げれば、自分の足が見えた。
「・・・ん・・・」
目だけを上下左右に動かし、状況を確認する。
ゆっくりとした動作で横を向けば、私の手を握ったまま動かないスイレンの姿があった。
どうやら今は、瓦礫のような固いものに背中を預けているような状況で、立ち上ることを試みようとするが、私は全身が痛くて動けなかった。
何もできなくてどうしようかと思案していると、前方から声が聞こえた。
「ハル?・・・ハル!」
「・・・三代目様・・・?」
「そうじゃ」
「三代目様、サスケ兄さんは・・・」
「サスケなら今、戦いに行っている。・・・余計なことは喋るな、傷が広がる。もう少しの辛抱じゃ、サクラが帰ってくるまでの辛抱じゃ・・・じゃから、目を閉じるな」
「三代目様・・・もう、」
「喋るなと言っておる!」
「・・・なに、そんな必死な声・・・出して・・・」
三代目が声を荒げた。
三代目が必死な形相をしているのに、私はなぜか笑みがこぼれてしまった。
「何がおかしい?」
「いや・・・必死だなあって・・・」
「ワシはお前を・・・」
「イタチ兄さんのことなら気にしなくていいんですよ・・・兄はもう死にましたし、死人に口なし、です。それにあなたももう火影じゃない・・・」
薄っぺらい笑い方しかできずにいると、三代目が悔しそうな表情をした。
「そんな顔しなくても・・・私はあなたのせいで死ぬわけじゃないのに・・・」
「それでも、ワシは・・・」
三代目が言いかけたところで、初めて聞く声がした。
「お前がハル・・・か」
しゃがれた声で、三代目よりも固く威厳のある声だった。
顔を上げれば、それが誰かはすぐにわかった。
「・・・あ・・・もしかして、六道仙人・・・?」
「いかにも。お前は・・・死にそうだな。聞きたいことはあったのだがやめておく」
「それでいい・・・」
六道仙人はやっぱり浮いていた。
浮いたまま、六道仙人は私の目の前まで来て手を出した。