第43章 対峙

（わかっていたことだ。ちゃんと・・・決めたはずなのに、どうしてこんなに・・・）


オビトが面の男だ、という事実を、何日もかけて受け入れたはずなのに、カカシの手は微かに震えていた。

本当は、そんなはずがないと思った。

でも、ハルがそんな嘘をスイレンに言うはずがないと思ったから、事実だと思うことにした。

逃げたくても、ハルを想うスイレンを見ていると、自分だけ逃げ出すわけにはいかなかった。


（苦しいのは当たり前だ。・・・こいつは、オレを庇って・・・それにリンを殺したのもオレだ）


心のどこかにある“覚悟”を探し出す。


（決めたろ、あの時、ちゃんと・・・）

（オレだけが辛いだなんて、思っていいはずがない）


「・・・お前・・・随分、変わったな。昔はそんなじゃなかったのに」

「過去は捨てた。昔のオレがどうだったかなんて、もう覚えちゃいない」

「・・・オレは、お前に許してもらえるとは思ってない。リンを守るっていうお前との約束は、破ってしまったからな。でも、だからといってオレは、ここでお前を好き勝手させるつもりもない」

「偽善者め・・・口だけの男のくせに」

「・・・そうだな」


そして―――操られている尾獣と激戦を繰り広げ、何とか乗り切ったあと、突然ナルトを纏っている九尾チャクラが消えた。


『チャクラの使い過ぎだな。・・・ナルト、ワシはチャクラを貯めなおす』

「ええ！？ちょっ・・・おい、九喇嘛！？」

『うるさい』

「そんなこと言ったって・・・オレどうすれば・・・！？」


九尾―――九喇嘛のチャクラが切れたことで、慌てるナルトに声を掛けたのはスイレンだった。


「ねえ、ちょっとうるさい」

「ンなこと言ったって・・・！」

「向こう・・・大きくて、嫌なチャクラを感じる。気を付けて」

「大きくて・・・嫌な、チャクラ・・・？」


すると、それは唐突にオビトの隣に姿を現した。


「・・・なんだ、思ったより遅かったな」

「お前、オレをこんな姿で・・・計画と違うだろう」


長髪に、赤い瞳。

鎧をまとっており、背にはうちはの家紋があった。

まだ何もしていないのに、存在感はこの場の誰よりも大きかった。