第40章 クロとハル
「で、この子は?」
口角を上げたまま、カブトが楽しげに問う。
「あのイタチとサスケの妹だ」
「!」
「加えて、大蛇丸がサスケの次に欲しがっていたものだ」
「・・・それって、クロさんのことかな?もしかして・・・彼女とこの子は同一人物ってこと?」
「その通りだ」
「へえ・・・なるほどねえ」などと呟くカブトを前に、彼女は黙ったままだった。
「ねえキミ・・・この子に何かしたの?」
「ああ。自我を封印する術をかけている。大蛇丸が開発した術だ・・・それをベースに術の強度を強めた。まだわずかに自我が残っていて不安定のようだが、術を破られることはまずないだろう」
「なるほど。それでキミはこの子を操って戦争で使おうという気なんだね?」
「コイツを手に入れるのには予想以上に時間が掛かった。何よりこのオレが出向いたんだ、それだけの働きをしてもらうつもりだ」
「へえ。そんなに気に入ったんだ?」
「素質は十二分にある。あとは存分に暴れてもらうだけだ」
カブトは再度ハルを見ていたが、何かを思いついたらしく視線はそのままで口を開いた。
「ねえ、この子。本名は何て言うんだっけ?」
「・・・“うちはハル”だ」
「ハル、ね。この子ボクに貸してくれない?」
「・・・」
「もちろん分身で構わないさ。キミの手札を奪おうなんて考えてないから安心してよ」
「いいだろう。だが、お前に一つ忠告しておく」
オビトは、さも面白がっている声色で言う。
「ハルの扱いには十分に注意しろ。コイツを使うのが吉と出るか凶と出るかはオレにもわからん。一種の賭けだな。封印が解けた場合は全力で殺しにかかってくるだろうから、自己責任でどうにかしろ」
「ご丁寧にありがとう。でも、たとえ彼女があのイタチの妹だったとしても、今のボクが負けるはずがない。でも気を付けておくよ。手札を正しく扱うことは基本中の基本だからね」
「勝手にしろ・・・オレは戻る。ハル、分身を出しておけ」
素直にその言葉に従うハルは分身を出すと、カブトの横へついた。
「じゃあね、“マダラ”」
カブトに返事もせず歩き出した彼の後ろをハルが何も言われずともついて行く。
カブトも口角を上げたままクルリと背を向けると、スタスタとどこかへ歩き姿を消してしまった。
『クロとハル』
“空っぽな人”