第39章 あなたのこと
彼の目が愉快そうに三日月形に歪む。
なんだ?と思った瞬間、突如心臓を鷲掴みにされたような苦しさが私を襲った。
「・・・ぐっ・・・う・・・あ゛あ゛・・・!!」
「あまりに術の効き目がないんで、強制的に連れて行く。安心しろ、殺しはしない」
いきなりうめき声をあげる私に、スイレンが必死に私を呼ぶ。
それと同じく、ナルトが私に駆け寄っていた。
「お前・・・彼女に何を・・・!!」
「さあな」
アザが急速に広がっていき、それと同時に苦しさも増していく。
ドン、とスイレンを突き飛ばし、私はうずくまり荒い呼吸を繰り返した。
(くそ・・・)
意識が遠のいていく。
チャクラのコントロールができなくなり、変化が解ける。
「ククッ・・・ここにきてまだ抗うか。いいだろう、付き合ってやる」
遠くでそんな声が聞こえ、私は揺れる視界の中でナルトとスイレンの姿をとらえると、声を絞り出した。
「ナルトくん・・・スイレン、を・・・よ・・・よろしく、ね・・・それと、スイレン・・・」
『なあに・・・?』
「約束・・・絶対守って・・・破ったら許さない・・・」
“約束”を思い出したのか、スイレンは泣きそうな顔で頷いた。
「ひどい顔・・・」
もう呼吸が苦しい。
視界が霞んでいく。
(ごめんね、スイレン)
完全に目を閉じると、私は暗闇のなかへ引きずり込まれていった。
「・・・散々手を焼かれたが、これでやっと手に入る」
「お前、クロに何しやがった!!」
「さあな」
マダラはそう言うとクツクツと笑い、木の檻をすり抜け、意識のない彼女のもとへと移動した。
そこにはナルトもいる。
ヤマトが慌てて術を解くと、ナルトを庇うようにカカシが前に出る。
しかし、そちらには興味がないらしく、マダラはクロを抱き上げると、目の中へ吸い込んだ。
「テメェ・・・!!」
「落ち着け、ナルト!」
「カカシ先生、どいてくれ!!・・・おい、スイレン!お前、クロが大切なんじゃねーのかよ!?」
「ナルト、お前は少しクロのことを知った方がいい」
「なんだと・・・!?」
「コイツの真実を、少しは聞いたことがあるのか?・・・お前の仲間という言葉はずいぶんと安いな」
マダラは皮肉ったように笑うと、「じゃあな」と言って姿を消した。