第33章 笑顔
サソリが死んで、少しの時間が経った。
私は、木ノ葉の里にいた。
『ハル、大丈夫なの?』
「微妙・・・だけど、たぶん大丈夫」
『そう?ならいいけど』
「自分の感情くらい、コントロールできるようにならないとね」
サソリを殺したのは、チヨバアとサクラだ。
大切な人を殺され、憎むべき相手なのだろうけど、私はどうすればいいかわからない。
「・・・私は復讐なんてしない」
『そっか』
「じゃ、行こうか」
失った悲しみと怒りは、どこにも向けることができない。
ただ、その感情に知らないフリをして、心の奥底に沈めることしかできなかった。
向かったのは、火影室があるところだった。
ノックをし、「クロです」と言うと、「入れ」という綱手の声が聞こえた。
ドアを開けると、そこには一人の男と、綱手と、シズネの姿があった。
「お久しぶりです、綱手姫。挨拶に来ました!」
「ああ・・・ちょうどよかった。クロ、お前に紹介しておこう。この男がしばらくの間、カカシの代理として、カカシ班の指揮をとることになる」
(私の記憶違いでなければ、この人は・・・)
「ヤマトです。よろしく」
「ヤマトさん、初めまして。私、クロっていいます。どうぞよろしく」
彼をじっと見ていると、綱手の咳払いが聞こえた。
「クロ、見すぎだ」
「あは、ごめんなさい」
「ま、ちょうどいい機会だ。お互い知っていてもいいだろう。いつか、同じ任務につくことになるかもしれないからな」
その言葉を聞いたヤマトは、若干驚いたような表情をしていたが、私はにっこり笑ってヤマトを見た。
「それでは、綱手姫、私はこれで。挨拶をしに来ただけなので」
「そうか。あ、そういえば、以前、お前がヘルプに入った任務だが、なかなかの高評だったぞ」
「あは、ありかとうございまーす。またよろしくお願いしますね」
「ああ」
(言われるままに参加した任務だったけど、受けてよかったな。ま、紅班とアスマ班だったし、断る理由がなかっただけなんだけどね)
軽く会釈をし、部屋を出る。
部屋を出るなり、すぐにスイレンが口を開いた。
『ねえねえ、あの男知り合い?』
「いや、違うけど」
『え、そうなの?』
「うん。こっちが一方的に知ってるだけ」