第30章 あなたがいない場所
『ううん、キミは優しいよ。僕は知ってる』
「・・・聞いてて私が恥ずかしくなるからやめて」
『はは、いつでも言ってあげる』
「でも、私はスイレンが思ってるより優しくない。買い被りすぎね」
そう、私は優しくなんてない。
「全部自分のためにやってることだし」
『そうなの?』
「そうよ」
ふぅん、と肯定も否定もしないスイレン。
「今、会話がめんどくさくなったでしょ」
『・・・あは』
「ま、先のことなんてわかんないよ。考えるだけムダよ。ところでネネのところまであとどれくらいで着くの?」
『あと十秒』
「は」
『あ、着いたー!』
バッ、とスイレンがいきなり飛び上がれば、視界がひらける。
そして見えたのは、
「ちょっ、ちょっと待って、」
『あ、ちょっと間違えたかも』
「池!!池だって!!」
『えー、湖でしょ』
―――バシャン。
スイレンいわく“湖”の上に着地した。
もうどっちでもいいけど、こんなの初めての経験だ。
なんだか予想外すぎて、笑えてくる。
「あははっ、もう・・・!」
『あはっ、ごめんね。あ、ネネ』
「え、ネネ?あ、ホントだ」
湖を囲むように、森があった。
私たちが出てきた方の森とは反対方向から、ネネや、動物たちか出てきている。
そりゃそうだ、こんな森のど真ん中で人間の笑い声がするのだ。
『主様、と、ハル・・・?』
「久しぶり、ネネ」
スイレンに「降りるよ。ありがとう」と言うと、驚いたようなネネの声が聞こえた。
『ああああ!!』
「!?」
『アンタらあああ、ハルが来たでぇ!』
ネネの声がその場に響く。
すると、森の中からたくさんの動物が姿を現し、湖を囲んだ。
私とスイレンはまだ湖の上で、その動物たちの輪の真ん中にいるというのが現在の状況。
『これはまた熱烈な歓迎だね、ネネ』
「私たち、何か気に障るようなことしちゃった?もしかしてうるさかった!?」
『いやいや、何をそんなに慌てとん?ウチらは歓迎しとるんやで、ハル。主様はこの前会ったばかりやん』
「・・・歓迎?」
『そ。久しぶりやな!なんで会いに来てくれんかったん?ウチ、寂しかったんよ?』
そう言うと、ネネは岸からこちらに飛んできた。
そして、私の肩にとまると、顔を私の頬にすり寄せた。