第28章 途中
居間に戻ると、いたのはペインだった。
(じゃあ、イタチ兄さんはまだ向こうにいるのか)
「おう、ハル。遅かったじゃねーか」
「うん、まあ・・・」
「ま、いいや。ハルもやろうぜ。トランプ」
「トランプ?」
「ダウトだ。知ってるか?ま、一回見とけ」
次回から参加することになったトランプは、「ダウト」をするらしい。
ルールは知っているけど、今はトランプよりさっきのことが頭を埋め尽くしていた。
“言わないでくれ”
イタチは、私にサスケのことを知られたくない。
―――なら、私は知らないフリをしよう。
(イタチ兄さんが、私には知られたくないというのなら、そうしよう)
黙っている私を心配してくれたのか、オオカミ姿に戻ったスイレンが私を覗き込んだ。
「・・・平気よ。大丈夫」
トランプで盛り上がっているみんなの中で、私はさっきのことが尾をひいて、なかなか混じることができなかった。
「―――ハル?どうしたんだ?」
トントン、と肩をつつかれ目線を上げると、横にはイタチがいた。
「も・・・あ、ううん、なんでもない」
戻って来てたんだ―――とは言えない。
言いかけて慌てて口をつぐんだ。
イタチはいつも通りの表情だった。
「大丈夫?」とは聞けなかった。
「おい、トランプすんぞ」
「あ、うん。トランプね。・・・ダウトだったっけ?」
「今んとこ、オイラと飛段がドベだ・・・うん」
そう言いながら、デイダラがトランプを人数分に分けていく。
「イタチ兄さんは?」
「いや・・・オレは部屋に戻るよ」
イタチは私の頭を撫でて、部屋に戻った。
いろいろ考えたいことがあるのだろう。
イタチの後ろ姿を見送ると、トランプを手に取った。
「ダウトでしょ?ルールわかるよ。あんまりやったことないけど・・・」
「おっ、わかるのか?お前が入るから、オイラはもうドベじゃなくなるな!うん!」
嬉しそうに言ったデイダラだったが、結果は残念なことに、ドベはデイダラと飛段のままだった。
「デイダラと飛段さんはモロ顔に出ますよね」
そう言うと、「マジで!?」とあからさまにショックを受けていた。
(嘘が上手なのも、いいかどうかは微妙だけど)
『途中』
“皮肉な人”