第26章 つじつま合わせ
―――再不斬と白のもとを訪れてから数日後。
暁にも“霧隠れの鬼人が死んだ”という噂が入っていた。
「―――へえ。おい、鬼鮫。お前、確か霧隠れ出身だったよな?なんか知らねえのか?」
「私に聞かれてもましてもねえ・・・そりゃあ顔を合わせたことは何回かありますけど」
「旦那、もしかして戦ってみたかったとか?やめとけって・・・うん。旦那、死んじまうぞ」
「バカ、このオレが負けるわけねーだろ!まあ、死んだんなら戦えねーな」
居間で話していた三人のところに、ちょうどハルがやってくる。
「何の話?」と言わんばかりに首をかしげている。
サソリが「何でもねーって。あ、そういえば」と話を変えたが、ハルは気にした風でもなく相槌を打っていた。
その無邪気な笑顔を見ていると、この前のことが嘘だったのではないかと鬼鮫は思う。
“あ、鬼鮫さん。このことは他言無用でお願いしますね?もちろん、イタチ兄さんにも”
今回の一件でハルの別の一面を見た気がする。
鬼鮫は「いいでしょう」と頷いて返したが、その時のハルはいたずらっ子のような笑みを浮かべていた。
まるで別人だった。
鬼鮫が思っている以上に、この子は大人だ。
あのイタチの妹だ。頷ける。
―――どうやって再不斬を死んだ噂を流せたのか、そこら辺は依然謎だが、ハルのお願いを了承してしまった以上、詮索するのはあまりよくないだろう。
イタチには言えない。
あなたの妹は、純粋なだけじゃないですよ―――なんて。
『つじつま合わせ』
“作り上げたウソ”