第2章 子供時代と一つの事件。
「じゃあね、おやすみ」
そう言って私の頭を撫でて、瞬きの間にどこかへ行ってしまった。
(・・・そっか、暗部だったっけ)
カカシがいなくなったこの部屋は私一人だけじゃ、広く感じた。
(・・・何だか、寂しいな)
そこで、少し自分の思っていることを思い返して自嘲気味に笑う。
「・・・わたし、子供だなあ」
どうやら私は身体だけでなく、思考も心も幼くなってしまったらしい。
そこまで考えて、私は目を閉じた。
目が覚めると、朝だった。
軽く伸びをすると、どこかの骨がコキ、と鳴った。
すると、扉が開けられ、一人の女の人が入ってきた。
「おはよう。良かった、目が覚めたんだね」
「・・・・・・・・」
「あ、私はお医者さん。ちなみにここは病院よ。あなた、この前のこと、覚えてる?」
コクンと頷いた。
「そう、怖かったでしょう?でも、もう大丈夫。・・・あ、ねえ、傷のほう見てもいい?」
(・・・怖い、とか。そんなの考えてなかった)
頭の中は真っ白で、何も考えてなかった。
「・・・・・・・・・どういうこと?」
服をめくって、私のお腹を見ていた女医者が呟く。
そして、私を見て、言った。
「・・・痛くない、よね?」
「・・・・うん」
「・・・昨日、誰かここに来た?」
「・・・・わから、ない」
「・・・・そう」
(この人、何を言いたいんだろう)
いまいち言葉の意図が掴めなくて、そっと傷口に触れる。
(・・・・あれ?)
「・・・・うそ、」
その言葉は声にならずに、口だけが動いた。
(・・・傷は、どこ?)
痛くない。
どこを触っても子供の身体特有のすべすべ感がある。
(・・・傷が、ない)