第23章 休息と隠し事
「ハル・・・まだ寝ててもいいんだぞ?」
しばらくボーッとしたあと、ゆっくりとイタチを見上げた。
そして、左手が掛け布団の外に出ていることに気づくと、バッと手を隠した。
勢いよく上体を起こし、壁際まで後ずさりすると、キョロキョロと辺りを見渡した。
「あの・・・ハルさん?」
部屋にはまだ、イタチ、鬼鮫の他に、角都と飛段がいた。
鬼鮫が声をかけるが、ハルは固まったままだ。
「ハル、もうみんな知ってるぞ」
「えっ・・・ああ・・・」
「・・・もしかして、ソレ、隠そうとしたんですか?」
(そういえば、もうバレてた・・・)
・・・返す言葉もない。
黙っていると、イタチが口を開き言った。
「そうだ・・・お前には、いろいろ聞くことがあったんだ」と。
「―――・・・どうしても言えないか」
「そ・・・そんな怖い顔したって、言わないから」
「プッ、聞いたか角都。イタチのこと怖い顔だってよ」
「・・・あとでどうなっても知らんからな」
「あ、待てよ角都!自分一人だけ逃げるなんてズリィぞ!」
「あなた方は居間の血を拭いてください。もちろん、逃げたら・・・一週間ご飯抜きですからね」
「・・・分かった」
イタチ以外の三人が部屋を出ていく。
鬼鮫の言葉に角都が反応し、引きずるようにして飛段を連れていった。
部屋には私とイタチの二人だけとなった。
「・・・ごめんけど、言いたくないの」
「・・・・・・」
「・・・あと十年後くらいになら言ってもいい。でも、今はイヤなの」
そう言って唇をキュッと結ぶ。
何か言われる覚悟はできている。
「・・・イタチ兄さんには嘘、つきたくないから」
(全部終わるまで言えない。これ以上、イタチ兄さんの負担を増やすわけにはいかない・・・)
(私が、十年後まで生きてたら・・・の話だけど)
私がそんなことを考えていると、イタチが大きく息を吐き出した。
「・・・分かった」
「・・・えっ?」
「無理に聞き出そうとして悪かった」
予想外の言葉に思わず目を丸くする。
「・・・お前は一度言い出したら聞かない性格だからな。案外意地っ張りというか、強情というか」
イタチはそう言って眉を下げて笑った。
『休息と隠し事』
“想う嘘”