第19章 それぞれの帰宅
「あれ?そういえば・・・クロ、姉ちゃん・・・は?」
少しぎこちなく言ったのはイナリだった。
それに対し、サクラが曖昧に答える。
「え?あー・・・クロは・・・今いないの」
「そう・・・」
「どうしたの?なんか用でもあったの?」
そう聞くと、イナリは服をぎゅっと握りしめながら言った。
「お礼、言おうと思って・・・」
「え?」
「あれから、ボク分かったんだ・・・ボクはただ甘えているだけなんだって。確かに、あの時はすごくびっくりしたけど・・・でも、つらいのはボクだけじゃないんだって教えてくれたんだ」
その言葉を黙って聞いていたカカシだが、内心穏やかではなかった。
今すぐにでも里に帰って、三代目にクロについて話を聞きたいところだったが―――。
「カカシ先生?大丈夫?ひょっとして、傷が痛む?」
「あ、サクラ・・・いや、ありがとう。大丈夫だよ。少し考え事をしていただけだ」
もし、サスケの思っていることが正しいなら、あの子は相当あやしい。
自分の身を案じてくれているサクラに笑い返すと、サクラは「そう?」と心配そうにしながらもツナミの手伝いをしに、部屋を出ていった。
『それぞれの帰宅』
“二つの命の幸せ”