第14章 バレンタインの出会いと決心。
――――次の日。
『ハル』
「あ、ネネ!」
あの白いヘビが言っていた通り、私のところにネネは来た。
今はスイレンに人型になって体術を教えてもらっていたところで、丁度休憩していたところだった。
『ハル、元気しとったか?』
「うん、ネネも元気そうで良かったよ。・・・それで、あのこと・・・だよね」
ネネはぎこちなく『うん』と答えた。
少し離れたところいるスイレンを横目で見ると、スイレンは笑って頷いていた。
静かに深呼吸をする。
吐き出した息には、少し緊張が混じっていたかもしれない。
「・・・ごめん。ごめんね、ネネ。私、まだ行かない」
ネネはその言葉を聞くと、俯いて、そのあと少しだけ笑った声で言った。
『・・・そっか。ううん、謝ることないで。分かってたんや、少し我儘が過ぎてたことくらい』
「ねえ、ネネ。最後まで聞いてよ」
明らかにショックを受けたようなネネに、「まだ終わってないよ」と笑いかける。
「“今は”ってさっき言ったでしょ」
『?』
「ネネ、さっきのは“今すぐは行かない”っていう意味であって、“行かない”とは言ってない」
『・・・えっ?ってことは・・・?』
「あと二、三年くらい待ってほしいな。それからなら私、五年くらいなら付き合ってあげることは出来るよ」
ポカン、とした様子のネネを見つめていると、スイレンのくすくすと小さく笑う声が聞こえた。
「ちょっと、こら。スイレンってば、何笑ってんのよ」
『いや、だって。ネネの顔が、さ』
人型のスイレンの白く長い髪が揺れる。
そのままスイレンはこちらまで歩いてくると、髪を鬱陶しそうに掻き揚げながら言った。
『ハル、言えたじゃん。ね、ネネいいよね』
『・・・う、ん・・・うん!あ、でも・・・』
「何?」
『その・・・出来たら、ウチらんとこに、たまには遊びに来てほしいなあ、なんて・・・』
ネネは少しもごもごと言った。
今日のネネは何だかいつもと違って自信なさげだ。
「うん、別にいいけど。あ、でも場所分かんないから迎え来てくれる?」
そう言うとネネはワンテンポ遅れて『うん!』と元気よく言ったのだった。