第11章 ネネの正体。
珍しくネネがスイレンに食い下がっているようだった。
それでもスイレンは譲ろうとはしなかった。
『だからって、そんなことしてたらあの子らが・・・!』
『ねえ、じゃあ聞くけど。お前、こんなことでハルを巻き込んで、万が一、いや億が一でもハルが死んじゃったらどうするつもり?まあ、致命傷でも大丈夫なんだけど、さ』
「ちょっ、スイレン・・・!ネネも落ち着きなよ」
『“こんなこと”って何やねん!!そんなどうでもいいことちゃう!!』
お互い、どこか譲れない部分があるようでいつの間にかネネは私の肩から離れ、スイレンの目の前に降りていた。
『お前、さ。馬鹿なの?』
『っ』
スイレンは真面目な声色だった。
スイレンの言葉は続く。
『ねえ、僕さ、前にお前に言ったよね。そのこと忘れた?お前は僕の何百年を無駄にする気?』
その言葉でネネは随分と萎縮したように見えた。
『・・・僕だってお前を手伝わないって言ってるわけじゃない。ただ今すぐは無理だって言ってんの』
『・・・はい』
ネネとスイレンの間で何か納得したのか、ネネは落ち着きを取り戻していた。
「・・・大丈夫?」
『うん。ごめんね、ハル。揉めちゃって』
「いやそれはいいんだけど・・・」
ネネは俯いていた。
「ネネ、明日行こう?・・・確かに今から突入は無理だね。ごめん、私が軽率だった」
『ちっ、違う!ウチが・・・!』
「―――だからね。今から偵察に行こう!」
私が言うと、ネネとスイレンは揃って『は?』と間抜けな声を出した。
『は?えっ、ちょっ、え?』
「ほら、スイレンも言ってたじゃん。下調べが必要だって」
『え、うん。確かにそうだけど・・・』
じゃあ、行こうか。
そう言うと、ネネはポカーンとしているのか何も言わなかった。
「・・・行かないの?」
『う、ううん!行く!行く!』
「スイレンはどうする?」
私が聞くと、スイレンはハハッと困ったような笑い声をあげた。
『・・・もう、行くしかないでしょ』
「決まり!」
そうして明日に向けた下調べが始まった。
『ネネの正体』
“それぞれの譲れない想い”