第10章 逃げ込んだ先に。
何だか周りが騒がしい気がしてうっすらと目を開けると、まず一番に懐かしい匂いがした。
二日ほど会わなかったもう一人の兄の匂い。
どうやら、イタチの膝に座っているようだった。
「ん・・・?」
何、と声を出す前にデイダラの大きい声が響いた。
「あー!!旦那、またオイラの取った・・・!!」
「あ?んな小せぇこと言うなよ」
「おい、静かにしろ。ハルが起きるだろ。・・・ん?」
パチリと瞬きを一つすれば、丁度イタチと目が合った。
「あ、」
「起きたか、ハル」
そのままポカーンとしていると、フッと笑われた。
そしていつの間にかその場はシーンとなっており、メンバーらの視線を集めていた。
「えっと、あの」
「ハル、今までどこに行っていた?」
私もやっとその視線に気づくが、イタチはそれも構わず私の目をしっかり見て言う。
(み、みんな見てる・・・)
何だかイタチが怒っているように見えて、一生懸命逃げようと身をよじるが、寝起きの身体ではうまくいかず失敗に終わった。
「・・・あ、あの・・・その」
「・・・言えないのか?」
「っ・・・」
サスケのところに、なんて言えるわけもなく、口をつぐむ。
だが、イタチが怖いのは事実で、私も人間なわけで。
少し、ほんの少しだけ、私の目に水の膜が出来てきた。
やっぱり見られたくなくて、俯く。
「・・・何か言わないと、分からないだろう」
俯いた私のことを見たイタチ。
その声色は先程よりは随分と柔らかいものになっていて。
すると、イタチが私を抱えたまま、無言で席から立ち上がり、「少し外す」とメンバーに一言言い放つとそのまま自室へと歩いていった。
部屋につくと、イタチはベッドに腰を降ろし、未だ俯いている私を見ると一息ついた。