第10章 逃げ込んだ先に。
『・・・ここまで来たらもう大丈夫でしょ』
あの場から逃げるように去った私たちは、しばらく走っていたが、追ってこないことに気づいて走るのをやめた。
「もう、本当疲れたんだけど」
『まあまあ、後はサスケが何とかしてくれるって』
「・・・結局サスケ兄さんに迷惑かけちゃった」
ふと辺りを見渡すと、そこはナルトたち第七班が最初にテストを受けたあの場所だった。
「・・・ねえスイレン。ここ、どこか知ってる?」
『いや、知らない。何、知ってるの?」
「うん・・・ここはね、」
――――――――英雄と呼ばれるべき人たちが、眠っている場所。
殉職した忍。
(・・・イタチ兄さんが死んでしまっても、ここに名前が刻まれることはない)
本当の英雄は、うちはイタチなのに。
木ノ葉を救ったのは、イタチ兄さんなのに。
優しくて強い、
私の、大好きな、尊敬する兄なのに。
「・・・ここはね、殉職した忍たちの・・・まあ、簡単に言えばお墓だよ」
『ふうん』
「おかしいよね。イタチ兄さんが死んでしまってもここに名前が刻まれることはないんだよ」
矛盾している。
こんなのってない。
でも、それでも。
「・・・でも、私は何も言えないや。イタチ兄さんがそう決めたことなんだから。私ごときが口を出すようなことじゃない」
ザア、と辺りに風が吹き、それと同時に声が聞こえた。
「・・・珍しいな、こんなところに。若いのが来るなんて」
「え・・・?」
しゃがれた、いつか聞いた声だった。