第7章 帰ってきました。
「・・・あのね、今更私が父さんや母さんに会って、話しても、私・・・」
『うん』
「・・・薄情だって、最低だって、思うよね。でもね、」
『・・・・』
「でも、私は・・・何て言えばいいのかな、顔向けできないっていうか、」
『うん』
「・・・違う、そうじゃないの。あのね、私は・・・ハルは・・・」
いい思い出ばかりだった。
とても優しい家族に恵まれて。
「私が、うちはハルでいる以上は・・・その・・・」
思ったように言葉が出てこずに、グッと詰まる。
「・・・いい思い出ばかりだから。それを壊したくないの。父さんや母さんに会ってしまうと、どうしても甘えてしまうかもしれない。それが嫌で」
「・・・もちろん、会いたくないと言えば嘘になるけど。会えるって言われても、あまりしっくりこない」
「・・・だから、どっちでもいい。その時にならなきゃ、私は、“ハル”がどうするか分からないから」
『・・・ふーん・・・いや、予想外だったな』
ふとそんな声が聞こえ、下に向けていた視線を上げる。
「・・・?」
『やっぱり、キミはおもしろいね。どっちでもいいなんて答えが返ってくるとは思わなかった』
「あ、はあ・・・」
『キミに、キミの両親を会わせてあげる』
「・・・っえ?」
『キミなら、死者と会っても、大丈夫そう』
「・・・それ、どういう意味?」
『そのまんま。キミの感情は鉄壁の理性で守られているね』
「・・・意味わかんないんだけど」
『うん、分かんなくていいかも』
じゃあ、行くぞー!!
スイレンはそう言うと、私をいきなりおんぶし走ってどこかへ向かい始めた。