第12章 迷子の迷子の…!
更けていく程町の賑やかさはどんどん向上していくようだった。
先程までは見られなかった綺麗に化粧をした女性や、酒で酔っぱらった男性、色々な店が昼間とは全く違う顔を出している。
昼間に立ち寄ったあの南蛮の物を扱っている店も飲み屋に代わっており、中には酒を注ぐ女性が沢山いた。
「いやー、甲斐ってこんなんだっけか」
「いえ、甲斐は夜になればなるほど静かになりますからね…」
甲斐にいた時にはこんな町は見たことがなかった。甲斐の民はみんな健康的というかなんというか、早寝早起きが多いらしく、ここまで夜がうるさくなったことなど一度もなかった気がする。
「運よく伊達さんとか片倉さんとかいないかなぁっ」
「あのお2人は祭り事には顔を出しますが、日々こう言った日常的なものには参加なされないようですよ」
「そうなんだ…」
奥州で偵察の経験がある椿の言うことなので間違ってはいないだろう。その核心からくる残念さが何とも言えずとある店の前でため息をついた。
「あ、飲み物もらってきますからちょっと待っててくださいね」
「はーい」
椿は近くの店にお茶をもらいに行くためのそばを離れた。心細くはなったが、ここでしょんぼりしていては嫌な奴に声をかけられるかもしれないのでちゃんと背筋を伸ばして座っておく。
しばらくしても椿が戻らず心配そうにきょろきょろしているととある人に声をかけられた。
「探し物か?」
「あぁ…今人を待ってまして」
「へぇ、男か?」
「まさか、椿という女性ですよ」
その男はそうかい、と言っての許可も取らず横にドカッと座った。どこかで聞いたことのあるような声だが気のせいだろうとその男と談笑していた。