第11章 自立しないと。
「ちゃん、本当に行っちゃうの?」
「はい、お世話になりました。」
「い、今からでもやめるというのも」
「大丈夫です小山田さん」
は幸村だけでなくこの武田軍全体に迷惑をかけてしまったと、責任という責任はとれないが出ていくことにした。
折角仲良くなれた佐助や、初めから気軽に話しかけてくれた小山田、ここへいていいと許可を出してくれた信玄には申し訳ないがこれしか責任の取り方を知らない。
「殿ッここを出るとは誠の話でござるか?!」
「…言ったのかぁ」
「当たり前でしょーが」
幸村だけにはこの話はしたくなかった。きっと力づくでも出て行こうとするのを止めるはずだから。案の定何処で話を仕入れてきたかは知らないが鍛錬をしていたろうに転びそうな勢いでこちらに走ってきたのだ、どうせ佐助が情報を漏らしたのだろうが。
「何故、そ、某が至らぬばかりに!」
「違います違います私が至らないんですってハイ」
幸村は息を切らせながらどうにか思いとどまらせようとするがの意志は固かった。もうここでは十分優しくしてもらった。
もし、もしこれで長曾我部軍から戦でも仕掛けられるなんてことがあり、目的の人物がいたら無駄な戦は避けられないだろう。
「私、自分で決めたんです。もう迷惑はかけられないって。」
「しかし、某はちっとも迷惑だと」
「顔や口には出さないってのを知ってます」
「思ってもおりませぬ!」
ついにの肩をがっしり掴んだが、はさっと身をよじって抜け出した。そして満面の笑みで言う。
「本当にありがとうございました」
キャリーバッグを転がして、美しい着物も置いて、持参した甚平を着て旅に出る。