第21章 目に見えた希望が
は少しだけ、諦めていたのだった。
もうこうなってしまえば自分は生きては帰れないだろう、異世界から来た己をココが受け入れてくれるはずもなかったのだ。寧ろこの地を踏めたことだけにでも感謝はしていた。もとよりここでこうなってしまうのではないかという覚悟も決めてきたはずだった。
だが…だが、いざこうなってしまうと、少しでも生きていたい、死にたくない。そんな気持ちが自分を焦らせてしまう。
「はぁ…」
これから自分はどうなってしまうのだろうか。あの恐ろしい明智に殺されてしまうのか。鎌で血肉を蝕まれ、肉片となった自分を誰が受け入れてくれるのだろうか。悪い方向へと思考はどんどん働いていく。
「…どうしよう」
取りあえず、自分の写真でもとっておこう。
何を思ったかは携帯を取り出し、電源をつけてみた。
「はい、ちーず」
無音カメラで己の醜い笑顔を撮影し、自分は此処に存在していたのだと証明する。そうでもしないと今の心でさえ死んでしまうような気がしたのだ。写真に残して、自分は生きていたのだと…そんな証拠を残しておきたかった。
自分の写真をひらき、見てみると背後に誰かが経っていたのに気が付く。
辺りは暗くてほとんど見えないかったが、誰かの足がうつっていた。
「!?」
驚いて振り返ると、そこにはあのかつて恐ろしいと思ったあの男がいた。
「…あな、たは」
「よう」
もう見るだけで震えがおさまらなくなる。
いや、そんな事より彼はどうやってここに来たのだろうか?
警備が薄くなっていたとしても殺気垂れ流しの幸村や政宗、佐助や小十郎の目まで欺いて入って来るなどあり得ない。何があったのか。
は文字通り、開いた口がふさがらなかった。