第15章 恋しい気持ち
どうやら義姫は政宗の屋敷に2日間滞在したのちのんびり帰るらしい。
正直は安心していた。
義姫を今迄見てきた夢小説の様に説得とか、言い合いとか、そんなことをしなければならないのではないかと重く考えていた。
それがあんなにも優しい笑顔を政宗や家臣に見せ、親子喧嘩を繰り広げ、なんとも望ましい親子関係を築いているではないか。何故あんなにも気を重くしていたのかとはなんだか恥ずかしいような気持ちでいっぱいだった。
確かに政宗は義姫をうざったそうに思っているらしいがあれは親子間では必ずある一種の反抗期のようなものだろう。
「…お母さん、かぁ」
小十郎と別れた後、宴の席には戻らずに自室にこもっていた。
あの幸せそうな親子を見ているとこっちまで幸せな気持ちにはなるが、なんとも空しい気持ちになる。妬ましいわけではないが羨ましい。
親元を離れて初めて存在の大きさに気が付く。
「はぁー…あー…」
いくらため息を漏らしても尽きることのないソレはの気分を低下させるのに十分過ぎた。
「…楽しくねぇか?」
「…あー…あ?」
あんぐり口を開けたまま誰かからの声掛けに返事をして、やっと振り返るとそこには笑いをこらえている政宗が立っていた。必死に笑いが出てくるのを我慢しているらしいが肩を震わせている時点でアウトだと思ったのは気のせいかもしれない。
「Sorry、言い合いなんかしちまって」
「いえ、安心したんで大丈夫です」
そうか?と不審そうな顔で聞いてくる政宗はまるで小さな子供のようだった。
国主とて、まだまだ子供なところもあるのだ。よくやっているものだとふぅ、と息をついた。