第13章 奥州でも話します。
が目を覚ましたのはあの片倉襲撃事件(?)からそんなに時間が経っていない昼間を少し過ぎたころだった。
「…えっなにここ何処だし」
どうやら何処か…いや、もう場所は見当がつくがどこかの城の一室らしい。
もそもそと布団から抜け出して、ふすまを開けてみると外の景色がよく見えた。どうやら高いところのようで、幸村たちといた館のような横に長いタイプではなく、縦に長いタイプの建物のようだ。
「じゃなくて、あれっ椿ちゃん…いなくね?」
景色に見とれていて気が付かなかったが、その一室には以外に人はおらず椿の姿は見えなかった。別々にかくまわれているようだ。
小十郎は椿の事を知っている様子だったが、知り合いなのだろうか。奥州に来たことがあるとは言っていたがその時に接点でもあったのだろう。
深呼吸してふすまを閉め、おとなしく部屋で待っていることにした。
「誰か来ないかなぁ…暇だな」
「そうか、暇か」
「わああぁっ?!」
誰かの声が聞こえ叫び終わってからゆっくり振り返ると、そこに小十郎が仁王立ちしていた。悪意はないのだろうが顔が般若のように歪んでいる。
「あっ、ど、どうも、こんにちは」
「早かったな」
「え?…あ、そ、そうですかねー…」
何が早かったかの主語がなかったが、恐らく目覚めるまでの時間の事だろう。
小十郎は何をしに来たのかと聞けば、を起こしに来たらしい。
「…あっ、椿ちゃんは!」
「椿なら別室だ、アイツは抵抗が酷かった」
軽いため息をついた様子からは、別に静かにさせるまでに手こずったわけではなかったらしいが、面倒だったということは感じ取れる。
椿の安否も確認できてほっと胸を撫でおろした。