第8章 ヤキモチ
下手なことを言って拗らせるより、
一晩寝たら案外ケロっとしていることを期待して、
モブリットはそう言った。
部屋に戻ろうと、
腰を浮かせると同時に
ベッドについていた手に、
カコの手が被さるようにして掴んできた。
モブリットは
帰ろうとする動きを止めて、
カコを見る。
「……何でそんな顔してるの。」
カコの表情は、
上司と呼ぶにはあまりに弱々しく、
今にも泣き出しそうだった。
そんな表情を見て
つい笑いが溢れてしまった。
「だってモブリットが怒るから!」
「いや、俺は怒ってないよ?
怒ってたのはカコ。」
「いや、そうなんだけど……」
モブリットは、
ベッドに腰掛け直し、
カコの言葉の続きを待った。