第2章 再確認
「最近は物騒だねぇ」
『・・・何の話?』
「真選組参謀の嬢ちゃんなら知ってるだろ。死神の話を」
いつも通っている屋台の親父さんがそう言いだした。
私には思い当たる節があった。
『ああ・・・あれね』
「酔っ払いを狙ってるって話だが・・・。本当かい?」
私が、苦笑するとわかってくれたようだ。
「一般人には話せるわけねぇよな。そりゃそうだ」
『さすがに・・・ね。副長からも口止めされてるし』
コップに入った焼酎を煽り、息をつく。
『それにしても、やっぱり有名なのね』
「そりゃあ、首の皮一枚で繋がってる死体なんざ有名にもなるだろう。にしてもどこのどいつかねぇ。酔っ払いを狙うなんざ、性質のワリィ」
一人納得している親父さんを見ながら、考え事にふけっていた。
路地裏に転がっていた死体。それは酔っ払いがただつぶれているようにも見えた。
だが、それはまさに奇妙なものだったのだ。
体には傷一つないが、首だけがバッサリと刈り取られている。
首の皮一枚だけを残して・・・
ある程度はわかっていた。
誰がこの事件の犯人で、狙われているのがただの酔っ払いではないことも。
『私はいろんな人に恨まれてるからね。死神さんが狙ってくるかも・・・』
笑いながらそう言えば、親父さんは私の空になったコップに焼酎を注ごうとする。
それを制しながら、立った。
『そろそろ帰ろうかな』
「・・・気をつけなよ」
『大丈夫ですよ・・・そうだ、これから飲みに来た人にもちゃんと注意しといてくださいよ?』
特に・・・
『白髪のアホには・・・ね?』
「?」
屋台ののれんをくぐり、夜の街を歩いていく。
明るいネオン街にはこの隊服は釣り合わない。
真っ黒で・・・何者にも染まらない。
本当に真選組をかたどっているようで・・・