第5章 過去………
─蓮─
あの村を出て新しい家に住み始めた俺。その時、俺の知らない男が家にあがってきた。最初は、よく分からなかった。けど、母さんが幸せそうな顔をしていたから、何も言わなかった。
「蓮、新しい父さんだよ。仲良くしてね!」
「蓮という名前か、良い名前だな。宜しくな!」
「…え?……う、ん。…父さん。」
母さんは、ニコニコしながら新しい父さんを紹介する。俺が男の人に、父さんと呼ぶと、頭を乱暴にワシャワシャと撫でる。よくよく考えると母さんは、再婚したと今、分かった。そう、今の父さんは義理の父さんだ。別に、嫌いではない。
俺は息を吐き出して、意識を現在に戻す。香李は、泣き止んだのかゆっくりと立ち上がる。そして、弱々しくごめん…と俺に向かって言ったのだ。
「別に気にしてねぇよ。…とりあえず、歩くか…。」
「…………………うん。」
そして、俺達はまた歩き始めた。香李はよほどショックが大きいのか、無言だった。
─蓮 終わり─