• テキストサイズ

SAOGs

第21章 第31層~第40層 その3 "喧嘩花火"


数日後―
ヴィルヘルムはまた夜の中にいた

それこそが彼の世界であるが故
世界を照らす存在から嫌われ、自らも嫌ったが故に望んだ世界である

しかしその表情は固い
三十六層ボスを倒した筈であるのに、笑みはない

苛立ちを舌打ちで表す
彼の頭の中からはどうにも前の事が離れなかった
あの両手剣を使う男―ヴィルヘルムの獲物を実質奪った上に、彼との戦闘も決着には至らなかった
まるであの蛇の言葉の通りであるが故に苛立っていた

「見つけましたよベイ」

不意に彼の後ろから女性の声が響いた
気だるげに振り向いた先にはヴィルヘルムと同じ軍服、金髪を一つだけ結った―ポニーテールの少女がいた

「ヴァルキュリアか…何だ、俺と殺ろうってか?」

「はぁ…何でそうなるんですか…」

「無駄よベアトリス。結局この男はそういう人なんだから」

溜め息を吐くヴァルキュリア―ベアトリスの横に別の少女が現れる
真っ直ぐに伸びた黒髪、同じ軍服―冷たい、研ぎ澄まされた雰囲気を放っている

「言うじゃねぇかレオン。だったらテメェが相手になるか?」

黒髪の少女の言葉に対して挑発とも取れる言動のヴィルヘルム
空気が一気に張り詰め、どちらが先に手を出すのかという状態になった
その時―

「ここで喧嘩になるのは、勘弁して欲しいな」

―二人の間に別の男が割り込んだ
長身の男、またも同じ軍服

「今ここで戦う事に意味は無い。ベイ、貴方もそれが分かっている筈だが?」

「心配すんなよカイン、その程度は考えるまでもねぇ」

「螢、君もだよ」

「…分かりました、兄さん」

「で、揃いも揃って何の用だ?」

漸く落ち着いた状況
金髪の少女が改めて口を開く

「クリストフが呼んでいます。説教だか説法だかは知りませんが、ともかく向かってください」

「ケッ、了解了解ィ」

気だるさを残したままその場を後にするヴィルヘルム
残された三名は少しだけ、彼の後ろ姿を見続けていた
/ 739ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp