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SAOGs

第21章 第31層~第40層 その3 "喧嘩花火"


吸い殺す――その意味は分からない
だが無慈悲に、暴威がジンへ振り下ろされるその瞬間―轟音が響いた
多量の水が弾けるような轟音

暗い場所にいる筈のジンが、影に覆われた
ヴィルヘルムとジンは共に蔭の招待へ視線を向ける
その先には、巨大な魚―ハゼのような這うことが出来そうなヒレを持つ魚であった

「――っ!!」

ジンはこの一瞬を逃すつもりはない
轟音の発生源へ一目散に逃げる
辺りは暗いままであったが、逃げた先への恐れはなかった
川か池か湖か―何でもいい
ジンは真っ直ぐに水面へ飛び込み、身体を深みへ沈めた

直後、右からの強い圧力にジンの身体は押され―流される
流れがある―つまり、川
偶然にも発見出来た逃走経路に、ジンは心の内で感謝した


それから息が続く限りジンは水中に身体を沈め、漸く顔を水面の上に出した
そこは森の入口近くのエリア
穀倉地帯のような開けた場所であった

念の為、ジンは辺りを見回した
先程の森よりかは明るい場所を見回して、ヴィルヘルムがいないかを確かめる
その視界には一人たりとも、映っていない

(どうやら……撒いたみたいだな…)

妙な気配も感じなかったジンは、そこで陸へ身体を上げる
想像以上の疲労は彼を仰向けにさせたまま動かさなかった

「ヴィルヘルム…エーレンブルク、か…」

明らかな異常
明らかな異能
そんなプレイヤーがそもそもいる事への疑問がジンの中に生まれる

「何なんだよ…あの野郎…」

しかし答えを与える者はおらず、嫌な因縁と極大の危険がこの世界に生まれ落ちた事実だけを、ジンは感じていた
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