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SAOGs

第6章 第1層~第10層 その5 "天才"


何周したろうか…次第に下から攻撃のエフェクトをエリーは目にする
なるほど、自分が囮じみた真似をしているのにあやかろうという訳か…とすぐに察した

しかも、その主な攻撃は自分と同じ射撃
誰か射撃が出来る人が参加していたようだが、気にする事ではない
自分が相手をすべきはその人物との射撃勝負ではなく、目の前で浮遊する正八面体との正面きっての射撃勝負
文字通り命を張った戦いである
故に彼女は走り、撃ち、跳び、撃ち―延々繰り返すのだ

ここにきてボスの射撃頻度が増してきた
最初の数度は多少驚いたが、ブーストスキルとチャクラムの併用で回避―今だ無傷である
そして向こうが速くなるなら、こちらも速くすれば良い
その理屈の元に、エリーは自身のギアを更に上げる

徐々に曲芸の様な軌道を床があるまま行うようになるが、それでも彼女は揺らぐ事はない
避け、狙い、撃ちを繰り返しているが、その全てが本気である
本気である故に、刻々と彼女にも疲労というダメージが溜まってくる
それすら度外視して、彼女は戦い続ける
今はまだ戦い続けていられる

しかしながら、自分が徐々にミスショットの数を一つ二つと増やしているのに気付いていた
本気を保っている事がこんなに辛かったか、彼女に実感は無いが事実として彼女は先程よりも息を荒くし、足を縺れさせる恐怖を与えられ、狙いを外している

まだだ…まだだ、まだだまだだまだだ―
ここで限界なんて認めない

(もし…限界だとしても…)

認めない
これが限界ならば、自分は自分を違える事になる
それは御免だ、と彼女はハッキリと感じていた
故に―

「越えてやる…」

漏れた言葉はその瞬間の最上の願いに他ならない
彼女は歯を食い縛り、軋みを上げる肉体に鞭打って移動を続け、撃ち続ける
足と腕と指の感覚が疲労で大分無くなっている
それでも当て続ける、当て続けなくては…倒さなくては…
何故自分がこんな真似をしているのか、その意義が途切れてしまう

(だから…やらないと…)

そう思っているのに、身体の感覚は増々無くなる
遂に矢を取り落とした時―事態が動いた
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